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想い出アルバム 短編読み物「夜桜4」

夜桜06

短編読み物「夜桜4」

 吹き抜けの天井に、きらびやかな照明。
 豪壮なエントランスを目にして、美咲は場違いなところに来てしまったように感じた。約束した通り、芹尾は高級ホテルの一室を確保してくれたのだ。

 にわかに緊張が高まり、ロビーの前を小走りで通り過ぎる。ばったりと知人に逢うリスクを恐れたのではない。ホテルを利用する目的が目的なだけに、後ろめたさをおぼえてしまうのだ。


 しかし、ラウンジに芹尾の姿を見つけた瞬間、緊張よりも喜びが勝っていた。ついつい顔が笑みでほころんでしまうのをどうすることもできない。

「こんにちは。時間通りですね」
 爽やかな笑顔で芹尾が出迎えてくれる。
 芹尾は、ジャケットこそ羽織っているものの、前回とは違いカジュアルな姿だった。年齢のわりにジーパンが似合っているのは、普段から穿きこなしているせいかもしれない。

「こんにちは」
 弾む胸の内をなだめながら、伏目がちに席につく。シッポがあればブンブンと振りながら、芹尾の胸に飛びこみたい気分だった。
「今日は午後から有給を取りました。だからサボりじゃないですよ」
 そう言って芹尾が笑う。スーツから受ける印象より、ずいぶんと若やいで見えた。

「またお逢いできて嬉しいです。今日もお綺麗ですね」
「いえ、そんな……」
 私も逢えて嬉しいと伝えたかった。なのに再会の感激のせいで、言葉がつかえてしまう。芹尾さんも素敵です。そう素直に言えたらと、思わずにはいられない。

「お着物かと思ってました」
 洋服姿で現れた美咲に、芹尾は少し驚いたようだった。
「あ、あの……着物は持参してきました」
 小声で告げて、鞄を軽く持ちあげる。
「そうだったんですか。着物撮影なら温泉旅館が良いのでしょうけど、近場だと見つからなくて」
 反応を確かめるように美咲の顔を覗きこみながらも、芹尾は微笑みをたやさない。

 こうして再会を果たすまで、美咲は幾度も想像していた。下着を付けずに和装で赴く自分を芹尾はどのように扱うだろうかと。そのたびに、すっかり貪婪になった身体は高ぶり、気づかぬうちに指先を匂い濡らしてしまっていた。
 だが、迷った末に洋服を選んだ。慣れない着物で出かける不安が大きかったためだ。実際は、大きめの鞄を携えて出かける理由が欲しかったのかもしれない。

「こんな豪華なホテルだと気おくれしてしまいます」
「部屋はステイで予約してあります。むろん、お時間は美咲さんのご都合が許す範囲でおつき合いください」
 前回と同じように、芹尾は丁寧語で話しかけてくれる。その紳士的な態度が、美咲には好ましくもあり、もどかしくもあった。

 一度逢った気安さから、態度を豹変させるような男性は信用できない。けれど、ふたりの距離が縮まっていないとすれば、美咲の期待はまた裏切られてしまうかもしれない。

「夫は出張で、帰りは明日の夜になります」
 そういう事情で今日を選んだことは、前もって芹尾に伝えてある。それなりの覚悟を持って、この場に訪れたつもりだ。携えたキャンバス地のバッグには、一泊できる準備をしてきているのだから。

 とはいえ、お泊りしても大丈夫とまでは、はっきり言えなかった。詳しく聞かされていないが、芹尾とて妻帯者である。芹尾がどのような関係を望んでいるのか、二度目の逢瀬であっても確かめるすべを美咲は知らなかった。

「では早速ですが、部屋に行きましょうか」
 芹尾がスーツケースの取っ手に手をかけて立ちあがった。キャスター付きの旅行鞄は、むしろこうしたホテルでは自然に見える。
 ここからは、もう後戻りできない。そう心に言い聞かせながら美咲も席を立った。


 芹尾からメールがきたのは、ブログを更新した翌日だった。
 記事は「緊縛初体験」というタイトルにしたが、文章はおろか写真キャプションさえ付けなかった。
 お気に入りの画像に、ありったけの想いをこめたのだ。それだけに、芹尾に想いが伝わったとことが何より嬉しく感じられた。

 芹尾にしても、自分で撮影した画像がネットに公開されたのが、余程に嬉しかったのかもしれない。メールには「びっくりマーク」がたくさん連打されていた。その勢いに任せてというわけでもないだろうが「もしよければ、今度こそ着物姿で緊縛したい」と最後に一文が添えられていた。

 初めて恋文を受け取った少女のように、美咲は心が浮き立つのを感じた。
 不倫はしないと決めていた。一度きりでもいいという心づもりで逢ったはずだった。なのに何もなかった前回を、どこかで残念に思う気持ちが色濃く残った。

 このまま再び逢わなければ、朝刊のお悔やみ欄を眺め、後悔のため息をつく毎日が、なだらかにつづいたことだろう。しかし、梅が散り、桜が咲き、花の命の儚さに想いを馳せているうち、逢ってから別の後悔をしたほうがましだと考えるようになった。
 自らの心の変化にはっきりと気づかされたのだ。いや、肉体の変貌にあらがえなくなったともいえる。


 エレベーターの気詰まりな空気から解放され、芹尾の背を追って長い廊下を歩く。
「どうぞ、お先に」
 そう言ってドアが開かれた瞬間、美咲は思わず「わぁ」と感嘆の声を漏らしていた。
 明るい室内の奥に、映画のスクリーンのように横長な窓が広がっている。そこから高層ビル群が見え、遠くには深い緑色にかすむ海まで見渡せるではないか。

「素晴らしいロケーションでしょう」
 窓辺に来た美咲のすぐ横で、芹尾が嬉しそうな声で語りかけてくる。
 このお部屋、お高いですよね……
 そんな馬鹿げた言葉を言いそうになって、美咲は慌てて口をつぐんだ。せっかくの絶景が台無しになってしまう。

 うっとり景色を眺めていると、光の膜が全身を包みこみ、心が満たされていくのを感じる。光の源は、窓から射す日差しではない。
 隣で微笑む男性から発せられているのだった。

 芹尾の横顔をチラチラと盗み見る。
 渋い大人の男性だった。知的な相貌と、時おり垣間見せる少年のような笑顔。こんなに素敵なのに、初めて逢った時、がっかりしたのが、今となっては信じられなような気がした。

 着替えの間、部屋を出ると言いだした芹尾を押しとどめ、鞄を持ってバスルームに入った。広々としたスペースは、床に大理石が敷き詰められ、ガラス張りのシャワーブースまである豪華な造りだった。

 洗面台の大きな鏡に、自分の姿を映しながら洋服を脱ぐ。
 今ごろ芹尾は、スーツケースから縄を取りだし、テーブルに並べている最中かもしれない。そう思うと気が急いた。
 けれど、美咲は下着姿のまま、どうしようかと想いを巡らせるばかりだ。着物だから、下着を脱ぐのが自然なのかもしれない。また、そのつもりでいた。だというのに、いざとなって決心が鈍ってしまう。

 肩をすぼめ、そろりとブラを外す。鏡に映った自分に、美咲はカッと恥ずかしくなり視線をそむけた。こんな姿を見られてしまうのだろうか。そう考えただけで、ショーツの内側に貼ったシートに、女の体液を染みこませてしまう。

 これ程、はしたなく濡らしてしまう身体で、下着を脱いで芹尾の前に立つのは無謀に思えた。できるなら、汚れたシートを替えたいくらいだ。
 だが、シートを見られてしまうくらいなら、濡れそぼった場所を直視される恥辱を選ぶべきなのかもしれない。

 そんな迷いさえ、今の美咲には媚薬だった。今も分泌した体液がトロトロと溢れだしている。
 音を立てぬようトイレットペーパーを引き出し、くるくると手に巻き取る。ショーツを太腿まで下げ、淫らな源泉にそっと宛がった。

 ああ、いやらしい私に気づかれてしまう……
 とたんに、染みこんだ女の汁が指を濡らす感覚に、美咲はおののいた。気づかれたくないと思い、暴かれてみたいと迷い、心は千路に乱れてしまう。

 念入りに潤いを拭き取り、下着を穿き直しているときだった。
「何かお困りですか?」
 突然、ドア越しに芹尾の声がした。
「いえ……着替えたらすぐに出ますので」
 飛び跳ねてしまうほど驚いて、美咲は我に返る。
 バスルームに入って、もう二十分近くが経っていた。心配されて当然である。
 これ以上、芹尾を待たせてはいけない。そう思い直して、美咲はようやく襦袢に手を伸ばした。


夜桜10

「お待たせしました」
 着物姿でバスルームを出ると、弾かれたように芹尾が椅子から立ちあがった。テーブルの上に並べられた縄の束を目にして、美咲の鼓動が速まる。

「やっとお着物の美咲さんに逢えました」
 そう言って嬉しそうに目を細め、テーブルからカメラを取りあげた。バスルームの扉の前で、美咲は所在無げに立ち尽くすばかりである。

 部屋はオフホワイトの明るい色調で統一され、ゆったりとした広さがあった。中央には、キングサイズのベッドがでんと鎮座している。その奥にテーブルと一人掛けのソファーが二脚。窓を背にした芹尾が、こちらにおいでと優しく手招いている。

「お綺麗です。ブログの画像より、実物のほうが何倍もお美しいです。記念撮影をしなくてはね」
 前回にも経験したとはいえ、やはり気恥ずかしさが先立った。カメラに向かって、ぎこちない笑顔を浮かべ、言われるままにポーズを取る。
 娘の成人式の晴れ着姿を、夢中で撮影する子煩悩な父親といった風情で、芹尾は写真を撮りつづけた。

 窓辺に立ち、壁際に移り、次にはソファーに腰かけるよう指示される。思わずテーブルに置かれた縄の束に視線をめぐらせた瞬間だった。
「今回は麻縄にしましょうね」
 ファインダーを覗きこんだままの芹尾に告げられ、美咲は顔をうつむけた。

 恥ずかしかった。物欲しそうな表情になっていたのではないか。一瞬、女の顔になったのを見とがめられたのではないか。そんな不安にとらわれながらも、歓びが頬に朱色の火照りを灯す。

「どうやら待ちきれないようですね」
 珍しくからかうような口調で言って、芹尾はカメラをテーブルに置いた。
 美咲は恥ずかしさのあまり両手で顔を覆い、いやいやをするように首を横に振る。
「本当に可愛い人ですね」
 一転して甘くささやきかけられた。
 波が砂浜を洗うように、ときめきが胸の奥から押し寄せて、きらきらと歓びの泡沫(ほうまつ)が弾ける。

「さあ、立って」
 目の前に大きな手が差しだされていた。
 うつむいたまま、自分の手を重ねる。
 芹尾の手のひらは、さらりと乾いていて温かかった。緊張のためか冷たくなった自分の手が恥ずかしくて、美咲は思わず引っこめる。すると大きな手が追いかけてきて、ぎゅっと握りしめてくれた。

「冷たくなっていますね」
 芹尾が両手を持って、椅子から引きあげるように立たせてくれる。互いの身体が数センチの隙間で対面した。
「いい匂いがします」
 髪に息が吹きかかるほどの距離だった。美咲は恥ずかしくて下を向く。じっと見つめられているのがわかった。だから顔があげられなかった。

 握られた両手が熱い。身体の震えが芹尾に伝わっていることも恥ずかしかった。
 このまま顔をあげたら、口づけされるかもしれない。そう想うと、膝頭がふるふると震えてしまう。唇が触れた瞬間、ときめきの海の中で気を失ってしまうのではないだろうか。

 そんな想いを知るよしもない芹尾は、あっさりと手を放し、テーブルから縄を取りあげた。わざと焦らして楽しんでいるのかもしれない。女心を裏切り、もてあそぶのがサディストの才能だとすれば、間違いなく芹尾は一級のサディストだった。

「では、後ろを向いてください」
 物静かな声だった。自分だけがときめきに溺れ、胸を高鳴らせていたのが恥ずかしくなるほど、穏やかな口調だった。
「麻縄は綿のロープほど伸縮しないので、前回よりキツく感じると思います」
 両手を後ろで組まされ、手首に縄がかけられていく。手首の縛りはユルかった。しかし、上腕を固定されてしまうと、上半身の自由は利かなくなる。

「今回はお着物なので、シンプルな縛りにしますね」
 芹尾は例によって手順を話しながら、美咲の胸元に縄をかけていく。乳房を挟む形で上下に縄が巡らされた。
 縛られながらも、美咲が秘めていた熱い想は行き場を失い、たちまち萎んでしまう。本当はもっと厳しい顔をした芹尾に、淫らな身体を責めるように、黙々と縛られてみたかったのだ。

 優雅な所作で縄をさばきながらも、芹尾は短時間で縛りを完成させた。
「さあ、これでよしと」
 一丁上がりとでも言いたげな、あっさりとした口調である。
 念願だった麻縄での緊縛だというのに、肌でその感触を味わえないのが美咲には残念に思えた。しかも拘束感は、前回のほうが勝っていた気さえする。

「では、撮影をしましょう」
 カメラが向けられると、美咲は落胆を悟られまいとして微笑みかける。
 芹尾は言葉を尽くして美咲の和服姿を褒め、シャッターを切りつづけている。まるで前回のデジャヴュだ。

 しばらく立ち姿で撮影された後、芹尾に支えられてソファーに腰かけた。
「着物の裾を少しだけ乱してもいいですか」
 床に膝をついた芹尾が、下からの目線で話しかけてきた。

 とくんと心臓が撥ねた。
 美咲は言葉を発する代わりに、控えめに首を縦に振る。
 言葉が出てこなかった。緊張と期待で胸が膨らみ、縛められた胸元が急にキツく締めつけられるようだった。

 だが、芹尾はあくまでも紳士的だった。美咲の身体に直に触れぬよう注意を配りながら、素肌がわずかに垣間見えるよう裾を割る。着物と襦袢と白い肌が、三層にグラデーションを描くと満足げにうなづき、立ちあがってカメラを構えた。

 フラッシュが瞬く間、美咲の脳裡には卑猥な想いばかりが駆け巡ってしまう。
 元はといえば、ブログで着物姿が見たいと言いだしたのは芹尾だった。リクエストに応えて、美咲はいつも以上に淫らな姿をさらしてしまった。
 芹尾はブログの画像のように、徐々に恥ずかしい姿に追いこみ、興奮を煽りながら撮影したいと考えているのかもしれない。

 ひとしきり撮影が済むと、再び芹尾が近づいてくる。
「もう少し裾を乱しますよ」
 今度は美咲の返事を待たず、芹尾は無造作に裾を持って左右に開いた。ハの字を描いた裾から膝頭が現れ、閉じ合わせた内腿が、匂い立つように空気にさらされる。

「少し脚を開きましょうか」
 そう言いだした芹尾の真剣な表情が怖くなって、美咲は身体を硬直させた。
 下着を身に付けていて良かったと思う。この状況で脚を開かされ、何も身に付けていないと知られるのは、あまりにも恥ずかしすぎるからだ。

 芹尾のために買った黒い下着だった。とはいえ、シートを取り払ったせいで、既にその部分には染みが滲みだしているかもしれない。それを見られてしまうのもまた恥辱には違いなかった。
 美咲は何もできぬまま、閉じ合わせた太腿をもじもじと擦り合わせているしかない。

「脚を斜めにして、少しだけ開いてみましょうね」
 芹尾の表情には微笑みが戻っていた。声音の優しさは変わらない。
 そっと手が伸びてきて、美咲の膝の内側に両手が添えられた。自ら開くより、こうされたほうがずっと気が楽だった。こうされたほうが、ずっと官能的だった。

「力を抜いてください」
 言われるままに力を抜くと、芹尾の指が内腿に食いこみ、あっさりと両脚が割られてしまう。
 一瞬にして、頬はおろか首筋まで真っ赤に茹であがるのがわかった。触れられた場所から痺れが伝わってきて、ショーツの中で秘めやかに息づく小さな蕾が、ぴくんと花弁を持ちあげる。

 芹尾はそれ以上、脚を開かせようとはせず、少し離れた位置から美咲のポーズを確かめている。自らを見下ろしても、下着が露出しているようには見えなかった。もしかすると、しゃがんだ芹尾からは、はっきりと見えているのかもしれない。

 ダメ……恥ずかしい場所を見られてる……
 そう思うだけで、染みの源はさらに潤い、ヌラヌラとした粘液を湧出させてしまう。今も芹尾の眼前で、刻々と濡れ広がり、淫らなメスの匂いを放っているのかもしれない。

 濡らしていることを指摘されたら、すぐに脚を閉じ合わせていたことだろう。しかし、芹尾は何も言わぬまま立ちあがり、再び撮影をはじめた。
 シャッター音が響くたびに、脚を閉じたくなる衝動を必死に堪えた。芹尾がどのような表情で自分の肢体を眺めているのか気になった。欲望をたぎらせて、夢中でファインダーを覗きこんでくれているのだろうか。

「もう少しだけ、脚を開いたままでいてください」
 声をかけられて、美咲ははっとした。知らず知らずのうちに、太腿を閉じていたのだ。芹尾はカメラを胸まで下ろし、美咲がポーズを変えるのを待っている。手を添えられ受け身で開かれるのと違って、自ら脚を開くのは勇気が必要だった。

 瞳を伏せ、眉根をひそめて羞恥に耐えながら、美咲はゆっくりと脚を開いていく。恥ずかしかった。羞恥で身体が燃えるようだった。
 それでも見て欲しかった。ありのままの淫らな自分を知って欲しかった。
 美咲は堅く瞳を閉じて、芹尾が開いた角度より、さらに大きく両脚を左右にくつろげた。

「いいですねぇ」
 芹尾が声を高ぶらせて、勢いよく床に両膝をついた。
 シャッターを切りながら、にじり寄るようにして近づいてくる。はぁはぁと、荒げた呼吸が聞こえた。美咲の足元から這いのぼるような角度で、カメラのレンズを向けられる。
 その時、熱がこもった太腿の内側に、部屋の空気がスーッと流れこんできた。濡れた下着が、ひんやりと肌に貼りつくのを感じる。

 ああ……ビショビショになってる……
 すぐさま太腿を閉じ合わせたかった。そこだけ色濃く変色した濡れ染みが、芹尾には、はっきりと見えているはずだ。
 愛撫を受けたわけでも、卑猥な言葉を投げかけられたわけでもない。胸に縄打たれ、カメラを向けられただけで、ジョブジョブと音が鳴るほど下着を濡らしてしまう女。そんな女である自分を、ついに知られてしまった。
 そう思うと切なかった。

 けれど、恥辱にこそ悦びが潜んでいることを美咲は既に知っている。
 ブログを始めて、恥ずかしい姿を見られてしまう快感に目覚めた。卑猥なコメントが書きこまれると、女の部分がきゅんと感応してしまう身体になった。
 次第に縛られてみたい、責められてみたいと思うようになった。自分がマゾだと思ったことはない。だが、単にそれを認めたくなかっただけなのかもしれない。

 身体を慰める時、美咲が好んでする妄想は、男性に辱められ、汚される自分の姿だった。
 見知らぬ男に密室で拘束され、恥ずかしい恰好に剥かれた自分の姿を想った。
 嘲りの言葉を浴びせられながら、身体中を触られまくり、猛った男根を無理やり突き入れられて、屈辱と喜悦でむせび泣く。そんな妄想ばかりしていた。

 芹尾と逢ってからは、見知らぬ男は芹尾になっていた。
 妄想の中の芹尾は、紳士ではなかった。美咲の恥ずかしい証拠を見とがめて、態度を豹変させる冷酷な野獣だった。
 画像をネタに身体の関係を強要される。そんな妄想までしたことがある。現実にそうなったら怖いだけかもしれない。

 それでも、強風が桜の花を散らすように、男の力と欲望の凄まじさで屈服させられたかった。「こんなに大きな染みを作って欲求不満ですか」そうなじられてみたかった。

 すっくと芹尾が立ちあがり、無言で歩み寄る。
 美咲はびくんと肩をすくませ、顔を伏せて身構えた。後ろ手に縛られ座った姿勢では逃げようもなかった。
 さらに恥ずかしいポーズを要求されるかもしれない。濡らしていることを責められ、その部分に手が伸びてきたら、どうすればいいのだろうか。

 ショーツを脱がされてしまったら……
 一瞬にして脳裡にひらめいた想像が、美咲の花びらをトロトロのぬかるみに変える。
 下着を脱がされ強引に脚を割られたら、悦びがそこから溢れだし、濡れ匂う蕾がひくひくと勃ちあがってしまうかもしれない。

「暗くなってきましたね」
 荒げた呼吸を抑えこむような、静かな声で芹尾が言った。
「撮影はこれくらいにしておきましょうか」
 カメラを置いて近づいてくると、美咲を立たせる。

 ふと窓に目をやると、淡いブルーの上から灰色を塗りこめたような色の空が、地上に深い影を投げかけている。遠くに臨む海さえ、くすんだ鉛色に姿を変えていた。薄暮が近づいてきているのだ。
 黙ったまま芹尾が縄を解きはじめる。
 少しずつ色彩を失っていく街並みに、美咲の胸は痛みをおぼえるくらい締めつけられていった。


クリック「夜桜5」につづく

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[ 2015/03/30 21:00 ] 想い出アルバム(画像) | CM(6) | TB(-)
きた〜(*≧▽≦)ノシ))
智さまおはようございます!

みぃさまの悩ましいお姿も素敵~~~ヾ(〃^∇^)o
お待ちしておりました!!続きを♪

素晴らしい景色を前に行われるアブノーマルな行為。
ガツガツせず、あくまでスマートに
美咲を乱れるように誘導していく芹尾。
大人の色気たっぷりで
そして私の願望でもあるかも…

縄…解かれてしまうのですね…
もう少しこのままで…
そして、蕾を狂うほどに…
そうして欲しかったに違いありません。

最終回楽しみにしてます(*≧▽≦)ノシ))



[ 2015/03/31 06:50 ] [ 編集 ]
SMハーレク○ン・ロマンス
わはは様

こんばんは~(´∀`)♪

「夜桜」の続きをお届け出来て良かったです。
わはは様のように、期待してお待ちくださる方がいるので、書き甲斐がございます。ありがとうございます!

本当は最終回の予定が・・・
自分で自分の首を絞めるように、たっぷり書いて、物語の進展の遅いことw
「いつになったら、やっちゃうんだよ!」と、皆様がイライラしないのが不思議なほど、引き延ばしておりますw

縄を解かれて・・・どうなっちゃうのでしょうね。
SM小説っていうよりは、恋愛小説のつもりなので、大人っぽい恋の駆け引きが話の中心にあります。言ってみれば「SMハーレク○ン・ロマンス」でしょうかw

残りの分量を考えると、二度に分けないといけないかも。
なので、次回も最終回じゃなかったら悪しからず^^;
ま不出来な連載小説だと思って、お付き合いくださいませ。
[ 2015/04/01 00:52 ] [ 編集 ]
おはようございます
智 様

おはようございます。
少しご無沙汰しておりました。
ブログの更新を楽しみに今か今かと待ち望んでおりましたが、コメントを残せずにいて申し訳ありません。

最終回を楽しみにしているものの、
このお話が終わってしまうのは残念、寂しくも思います。

紳士的な 芹尾に嬉しくも頼もしくもあり、だけども もどかしさを感じる美咲はもうすっかり芹尾の手の中に在りますね。
大切に大切に守られている。
そんな印象を受けました。
素敵だと。

益々、先が楽しみですなりません。


なほこ
[ 2015/04/02 09:23 ] [ 編集 ]
紳士と淑女の交際
なほこ様

こんにちは。

少しご無沙汰だったでしょうか^^;
毎日メールをやり取りするような関係になったら、みぃがむくれるかもw
いや、みぃは天然なところがあるので「そうなんですか~」と言うだけかもしれないですw

なほこ様のブログに、私もいつもコメントしているわけでもなく、返って申し訳なくなってしまいます。どうかお気になさらずに。
エントリーを読んだら、とりあえず拍手コメで「読みました!」と一言書いて、コメント欄には時間のある時に・・・って感じがベターなんでしょうかね。

「夜桜」は、私自身も書くのを楽しみにしているため、いつまでたっても最終回まで辿りつきません。最後まで書かないうちから続編の構想など練ってしまう有様w

思い違いかもしれませんが、芹尾はなほこ様の主様のイメージに近づいてませんか?
最初からそのつもりで書いたわけではないのですが、なんとなくそんな気がしてきました。

SMは紳士と淑女の淫らな交際。けれど、二人の関係は刻々と変化していくはずです。どうかこの先もお楽しみに^^

追伸
つづきは、今日ではなく明日の21時に更新予定です。
今後は火曜日、金曜日にズレこんでいくかも^^;
[ 2015/04/02 16:05 ] [ 編集 ]
勘違い??
智 様

こんばんは
少しご無沙汰していた様に思いましたが私の勘違いでしたか(._.)
すみません。
誤解を招く⁉︎かもしれないようなコメントを失礼しました。>_<

私がコメントをさせていただきたいと思っているんです。(^ ^)

>エントリーを読んだら、とりあえず拍手コメで「読みました!」と一言書いて、コメント欄には時間のある時に・・・って感じがベターなんでしょうかね。

すみません>_<
どうか気になさらないで下さいね。

芹尾…実は私もそう感じていました。
ですが、ご主人様は私を「綺麗」とは仰いません(^^;; 笑
そこを除いて、(笑)似ていると感じました。
だからこそ 美咲 を自身と重ねてしまうのかもしれません。

淡々と緊縛し、撮影し、手先や視線、縄で私を辱め、狂わし淫らにしてくださいます。

続き楽しみにしております〜(^ ^)
[ 2015/04/02 18:38 ] [ 編集 ]
心配性
なほこ様

こんばんは^^

少しの時間でもご無沙汰と思われるのは、とても嬉しいです。
それくらい、頻繁にブログを訪れ、コメントしてくださっている証でもありますね。ありがとうございます。

かく言う私も、なほこ様のブログは、足繁く通わせていただいてます。
今日は、ランキングが2ページ目に行っていたのでビックリしました。毎日、バナーをクリックしないと、なほこ様が落ち込んでしまう! とハラハラ。
コメントのレスが遅れても、「何か気に障るようなことを書いてしまったかも」となほこ様が気に病まれていないかと心配になります^^;

なんか、気にしぃな妹と、心配性の兄って感じですねw

芹尾、やはりそうでしたか!
ブログで読み返していて、ふと似てるのではないかって思ったんです。
本当に意識して書いていたわけではないんですけど。

最終回は、まだ先になりそうですが、今夜の分もお読みくださいね。
そして、楽しい週末を^^
[ 2015/04/03 18:08 ] [ 編集 ]
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